福本章は、1932年に岡山県で生まれた日本の洋画家で、特に風景画を中心に、具象と抽象の境界を行き来する独特の表現で知られています。彼は東京芸術大学で学んだ後、1960年代初頭にフランスに留学し、その後フランスに定住しました。パリを拠点に活動し、ヨーロッパの芸術シーンと深く関わりながら、自身の画風を大きく発展させました。
福本の作品は、ヴェネツィアや南フランスなどの風景や建築物を題材にしたものが多く、具体的な形態を残しつつも、色彩や光の効果を駆使することで、抽象的な印象を与えます。たとえば、ひろしま美術館に収蔵されている「サン・マルコ広場」や東京国立近代美術館所蔵の「白い街(カンヌ)」などは、実在の場所を描きながらも、柔らかな色彩と独自の光の描写によって観る者を魅了します。
特に特徴的なのは、彼が「ブルー」の色彩を象徴的に用いる点です。このブルーは、深みと広がりを感じさせる要素として、静けさや感情的な動きを巧みに表現しています。また、彼の描く光は、単なる明暗ではなく、作品全体にわたって調和を生み出し、情感豊かな空気感を漂わせています。
このような特性は、フランスでの生活を通じて磨かれ、彼が風景や自然を題材にしたときにも、観る者にやわらかな温もりや静寂を感じさせます。彼のブルーや光は、単なる視覚的要素を超えて、感覚的・哲学的な深みを持つ表現として高く評価されています。
福本の作品は、具象と抽象の境界を自在に行き来しながら、観る者に深い感動と独自の美的体験を提供します。その活動は国内外で高く評価され、ひろしま美術館、愛知県美術館、東京国立近代美術館をはじめ、多くの美術館に彼の作品が所蔵されています。