詩的な作風で知られる二渡肇は、安曇野を原風景としており、その作品を通じて自然の中に潜む静けさや儚さを見事に描き出します。彼の作品には、田園風景の広がりとともに、そこに流れる柔らかな時間が感じられます。特に、光と影が織りなす微妙なグラデーションや、空気中に漂う湿り気や透明感を描く手法は、自然をただの風景としてではなく、詩の一節のように捉えていることを物語っています。
その詩的な雰囲気は、派手さや強さではなく、穏やかで優しいタッチから生まれます。一枚の絵に込められた静寂の中には、自然への畏敬や深い感情が潜んでおり、見る者はどこか懐かしく、そして心を委ねたくなるような感覚を覚えます。彼の作品は、安曇野という風土の美しさだけでなく、その土地が持つ物語や、人々の心の奥にある記憶をも映し出す詩的な芸術です。